August 26, 2007

カール・マイの魅力




A Very RED Indian

Originally uploaded by Pete Woodheadon flickr
前回の日記「クロアチアで撮影された西部劇」の続きです。

ヘッセもアインシュタインもシュヴァイツァーも愛読していた

クロアチアでも大人気だったカール・マイの冒険小説。1978年にエンデルレ書店から出版された日本語訳「カール・マイ冒険物語 アパッチの酋長ヴィネトゥー 1」のあとがきに、カール・マイの魅力を物語る大変興味深い話が紹介されています。(図書館から借りてきました。筑摩書房版のほうは見ていないので分かりません。)ヘッセが伝えたというその話は、次の通りです。

1949年、アメリカのコロラド州で開かれたゲーテ祭で余興として催されたインディアン・ショーに、ヘルマン・ヘッセ、アインシュタイン、シュヴァイツァーが同席したときのこと。本物のネイティブ・アメリカンが馬術などを披露するのを見たヘッセが、思わず叫んだそうです。「こいつはまったく夢のようだ。まるで我々の古馴染みのカール・マイが生きているようだ。例のヴィネトゥーの名だたる白銀銃までそろっている・・・。」すると、隣にいたアインシュタインもヘッセの膝を叩いてこのように囁いたのです。「実はわたしも同じことを考えていたところです。」そして、ショーのあと、アインシュタインは、ウルムとミラノで過ごした全少年時代、カール・マイに絶大な影響を受けたことを告白し、「今日でもなお、わたしが絶望的な気持ちになった時など、彼はわたしにとって、好ましく且つ価値ある存在なのです。」と言ったのだそうです。そのうちシュヴァイツァーも二人の会話に加わり、このように言いました。「もちろん私もご同様で、マイには血道をあげました。しかし、彼の作品で最も強くわたしの心を捉えたのは、彼の平和愛好と相互理解に対する確固たる信条です。これは、彼のほとんどすべての作品に生命を与えているものであり、寛容さといたわりをもつこと、つまり、たとえ隣人が悪の道を歩む者であろうと、その隣人の中にキリストに於る兄弟を見ること、それを教えてくれたものです。まさにこの点にこそ、彼の作品の不滅さがあるとわたしは思う・・・。」

誰にでも子供のころ読んだ愛読書があると思います。わたしにとっては、それが松谷みよ子さんとか舟崎克彦さんだったり、漫画やアニメだったりもするわけですが、彼らにとっては、カール・マイがそういうものだったのですね。

カール・マイの魅力

カール・マイの魅力については、先のシュヴァイツァーの言葉に全く同感です。先述のエンデルレ書店版ヴィネトゥの中のカール・マイによる前書きは、

赤色人種は死に瀕している!
(Ja, die rote Nation liegt im Sterben! )

で始まります。(ドイツ語版では、これは第2段の始めのようですが。)ネイティブ・アメリカンが「白色人種」にとことん卑怯なやり方で裏切られ、「打ちのめされ、叩きのめされながら」滅亡の道を辿っていることが説かれています。こういうことは、当時アメリカの作家たちにはなかなか書けなかったことではないかと思うのです。しかし、ドイツに住むカール・マイは、それをとても辛辣に言ってのけ、さらにこれがまた情熱的な口調なので、読んでいてもそれほど厭味には感じられません。ヒューマニズムの追求という、純粋な創作意欲に支えられているからでしょう。

私が今や大好きなハリー・ポッターのシリーズを初めて読んだとき、第1巻の半分くらいまでは正直言って進行が遅すぎてつまらないと思ったものですが、それに比べ、このヴィネトゥは、始めからずっと冒険続きで飽きさせません。前書きからすでに熱い気迫に満ちています。

カール・マイの小説を読むには

カール・マイ作品のドイツ語のオリジナルは、著作権の期限が切れているので、オンラインで読むことができます。

カール・マイの小説 (ドイツ語)
de.wikisource.org/wiki/Karl_May
追記:Winnetou I-III 

「ヴィネトゥ I」 の朗読 (ドイツ語)
www.gutenberg.org/etext/21798

カール・マイの小説 (英語訳)
karlmay.leo.org/kmg/sprachen/englisch/primlit/index.htm (追記:リンク切れ)
追記:www.karl-may-gesellschaft.de/kmg/sprachen/englisch...



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