February 11, 2006

ボスニア・ヘルツェゴビナには3つの国がある?



2月9日の日記「ボスニア・ヘルツェゴビナの記念切手」で、ボスニア・ヘルツェゴビナには郵便事業を受け持つ団体が3つもあることについて触れました。では、ボスニア・ヘルツェゴビナの人たちは実際どのようにそれぞれの郵便局を使うのでしょうか。気になったので、現地に住む友人に聞いてみました。

どの郵便局を使えばいいの?

  • 最寄の郵便局からどこへでも郵便物を送ることが出来ます。ただし、切手はその系列の郵便局が発行した切手しか使えないそうです。例えば、クロアチア系の郵便局から送るときは、セルビア系やムスリム(ボシュニャク)系の郵便局が発行した切手を使うことが出来ないということです。
  • 近所に2種類(ムスリム系とクロアチア系など)の郵便局がある場合は、あて先の住所によって選択します。あて先の場所がムスリム系の地域であれば、ムスリム系の郵便局から送ったほうが早いでしょう。ムスリム系の郵便局は、Mostar、Tuzla、Zenica、Bihać、Travnik、Goraždeなどにあり、その本局は Sarajevoにあります。Mostar(モスタル)にはクロアチア系郵便局の本局もあります。
  • 例えば、クロアチアとの国境近くに住んでいる人が、ボスニア・ヘルツェゴビナからクロアチアのザグレブに宛てて郵便物を送るなら、クロアチアに行ってそこの郵便局から送ったほうが早いです。(注:ボスニア・ヘルツェゴビナのクロアチア系郵便局ではなく、クロアチア共和国が運営している郵便局ということです。)ボスニア・ヘルツェゴビナの身分証明書があれば、パスポートなしで簡単にクロアチアに入国できるそうです。 追記:2013年7月1日にクロアチアがEU(欧州連合)に加盟したため、入国のルールが厳しくなりました。ボスニア・ヘルツェゴヴィナからクロアチアに入国するには、必ずパスポートが必要になりました。
10年前のデイトン合意によって、ボスニア・ヘルツェゴビナという国は、セルビア人が住む「スルプスカ共和国」(またはセルビア人共和国ともいう)と、クロアチア人とムスリムが住む「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」の二つに区分されました。しかし実際のところ、郵便システムを見てもわかるように、まるで3つの小さな国が共存しているような感じですね。「セルビア人はひとつの地域を国として与えられたのに、クロアチア人とムスリムはボスニア・ヘルツェゴビナ連邦を共有しなくてはいけないのが不公平だ」という地元の人の意見をよく聞きます。また、クロアチア人はボスニア・ヘルツェゴビナの中で不当に扱われているという意見もあります。

ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦

ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(ボスニア・ヘルツェゴビナという国の中の、スルプスカ共和国を除いた部分)の人口比率を2002年の統計でみると下のようになっています。

ムスリム(ボシュニャク人): 72.9%
クロアチア人: 21.8%
セルビア人: 4.4%
その他: 1.0%            (ウィキペディアより)

クロアチア人の数は約20%にすぎないので、いくら共存しているといっても、ムスリムの人に有利な社会構造になってしまうんでしょうね。クロアチア人たちのこんな声を聞いたことがあります。

  • 国に税金をどんどん吸い取られて、それがムスリムが多く住む場所(首都サラエヴォなど)の生活をよくするために使われるばかりだ
  • 10年前はとにかく戦争を終わりにしたかったので、デイトン合意を歓迎したが、蓋を開けてみれば条件が不公平で生活は苦しくなる一方・・・
  • デイトン合意を見直して欲しい

デイトン合意の問題点と見直しについては、昨年の10周年記念式典の頃も、欧米の新聞が多くとりあげていました。ボスニア・ヘルツェゴビナは、ようやく中央集権を目指して憲法を改正していくということなので、この国をどんなふうにまとめあげるのか、注目です。

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